名古屋大学   小林 伸吾

役職 : 特任助教
名前 : 小林 伸吾
Name : Shingo KOBAYASHI
所属 : 高等研究院 工学研究科・物性基礎工学研究グループ
研究分野 : 物性物理学

研究概要

固体中では原子と電子がたくさん集まることにより様々な不思議な現象が起きています。どのような固体が金属や絶縁体、半導体になるのかは、物質を構成する原子と原子配置が織りなす結晶構造によってほぼ分類されます。また、固体中では電子間の相互作用も重要な役割を果たしています。電子間の相互作用は、超伝導や磁性など様々な物理現象を理解するために必要不可欠であり、物質中の物理現象をより豊かにします。私は物性物理学のフロンティアの開拓を目指し、新奇物理現象の預言や新機能の探索の研究を行っています。また、現代数学が物性物理学にどのように取り入れられるのかという問題にも興味を持って取り組んでいます。
近年、私が取り組んでいる研究課題は、物質中の電子状態が非自明なトポロジカル数を持ったときにどのような現象を引き起こすのかという問題です。ここで、トポロジカル数とは数学の位相幾何学で現れる概念で、2つの物があったとき、それらが連続変形の下で互いに移り合えるか否かを判別する指標です。この問題は1980年代に量子ホール効果が発見されたときに話題になり、2000年代にトポロジカル絶縁体が発見されたことにより物性物理学全般に波紋を広げました。現在では、トポロジカル超伝導体やトポロジカル半金属など様々な物質において電子状態のトポロジーが重要な役割を果たしていることが明らかになっています。

令和元年8月より、理化学研究所創発物性科学研究センター(研究員)へ就職されました

<次世代研究者育成プログラムを振り返って>

私は平成28年度に本事業に採用されてから3年間、多方面にわたり充実した研究支援をいただきました。採用時にいただいたスタートアップ資金により、PIとして必要な研究環境を整えることができました。このとき購入した計算機により、有益な計算データを得ることができ、結果として、論文3本を出版することができました。また、在外研究の支援もいただきイタリアと中国に滞在し海外研究ネットワークを構築することができました。イタリアではサレルノ大学に滞在し、トポロジカル物質と呼ばれる近年発見された新奇物質について議論を交わしました。滞在後も交流を続け、現在論文を執筆中です。中国では香港科技大学に滞在し、トポロジカル超伝導体に現れるマヨラナ準粒子について議論を交わしました。この滞在をきっかけに、共同研究を続けています。さらには、三大学連携の共同研究として、北海道大学工学研究科の浅野准教授と共同研究を開始することができました。私はトポロジカル超伝導体の分類理論の研究を行っており、浅野准教授は超伝導体における輸送現象の専門家でした。お互いの分野は密接に関係していましたが、これまで交流がありませんでした。コンソーシアム事業の支援を受けて、浅野准教授と議論する機会を得て、共同研究に発展させることができました。結果として、共著論文1本を出版することできました。浅野准教授とは現在も共同研究を続けており、さらに論文1本を執筆中です。
研究支援の他にもPIセミナーなどコンソーシアム事業が主催するイベントに参加し、PIとして必須スキルを学ぶ機会をいただきました。特に、三大学合同の助教合宿では、異分野で活躍する若手研究者と意見を交わす機会を得ました。この経験は、今後自身の研究室を立ち上げる上で、かけがえのない財産になると確信しています。
最後に、メンターをはじめとする諸先生方、名古屋大学の事務やURAの方々、コンソーシアム事業に関わる方々、この場を借りて改めて感謝申し上げます。